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Excelでセルをコピーすると点線(点滅する枠)は出るのに、貼り付けだけができない。
Escキーを押しても点線が消えない。フィルコピーもできない。
そんな症状が2026年8月中旬から発生しています。
弊社でも自社PC2台とお客様のPC1台で同じ症状が発生し、いずれも解決しました。
本記事では、その原因と実際に効果のあった手順をご紹介します。
こんな症状が出ていませんか
次のうちひとつでも当てはまる場合、本記事の内容が当てはまる可能性があります。
- コピーはできる(点線は出る)のに、貼り付けができない(右クリックの「貼り付け」が選べない・Ctrl+Vも効かない)
- Escキーを押しても点線が消えない
- フィルコピーができない(セル右下の「■」をドラッグしても何も起きない)
- 貼り付けようとすると「クリップボードを空にできません。別のアプリケーションがクリップボードを使用している可能性があります」と表示される
- xls形式のファイルを開くとExcelが落ちる
これらはすべて同じ原因から起きています。ひとつずつ別々に対処する必要はありません。
なお、メモ帳など他のアプリに貼り付けようとしても何も入りません。
一方でWordでは同じ操作が正常にできるのが、この問題の特徴です。ExcelとWordではコピー時にクリップボードへ書き込むデータ形式の数が異なり(Excelは29形式、Wordは17形式)、Excel側だけが影響を受けています。
30秒で確かめる方法
お使いのExcelが該当するかどうかは、バージョン番号で判別できます。
スタートボタンを右クリックして「ターミナル」または「Windows PowerShell」を開き、次の内容をそのまま貼り付けてEnterキーを押してください。
@(
"C:\Program Files\Microsoft Office\Office16\EXCEL.EXE",
"C:\Program Files (x86)\Microsoft Office\Office16\EXCEL.EXE",
"C:\Program Files\Microsoft Office\root\Office16\EXCEL.EXE",
"C:\Program Files (x86)\Microsoft Office\root\Office16\EXCEL.EXE"
) | ForEach-Object {
if (Test-Path $_) {
$t = "MSI版"; if ($_ -match '\\root\\') { $t = "Click-to-Run版" }
"{0} [{1}]" -f (Get-Item $_).VersionInfo.ProductVersion, $t
}
}表示された番号で、次のように判断します。
- MSI版かつ16.0.5565.1001または16.0.5569.1003 … 該当します。本記事の手順で解決します
- MSI版でそれ以外の番号 … 別の原因です
- Click-to-Run版(16.0.19000番台など桁数が大きいもの) … 対象外です。Microsoft 365版やクイック実行版では発生していません
原因は2026年8月のセキュリティ更新「KB5002903」
原因は、2026年8月11日に配信されたExcel 2016(MSI版)向けのセキュリティ更新プログラム「KB5002903」(ビルド16.0.5565.1001)の不具合です。
そして重要な点として、2026年9月に配信されたKB5002914を適用しても、この問題は直りません。
「更新すれば直るだろう」と最新版を当てても解決しないため、原因にたどり着きにくくなっています。
弊社で3台実証しました
この問題については、8月下旬からインターネット上でもKB5002903を疑う声が上がっていました。
ただし、その多くは「そう言われている」という伝聞の段階にとどまっていました。
弊社では実際に、社内PC2台とお客様のPC1台、合わせて3台で更新プログラムの削除を実施し、いずれも症状が解消することを確認しました。
3台ともWindows 11 Pro・Excel 2016(MSI版)の環境です。PCの再起動は不要で、削除後すぐにコピー&貼り付けが正常に戻りました。
クラッシュ記録が示す発症日
原因を特定する決め手になったのは、Windowsが自動的に記録しているアプリケーションのクラッシュ履歴でした。
弊社のPCでは、2026年3月以降の約5か月半でEXCEL.EXEの異常終了はわずか1件。
ところがKB5002903を適用した6日後から、突然16件に急増していました。さらに9月にも7件。
そしてそのすべてが同一の例外オフセット(0xf854a)、つまりExcelの内部のまったく同じ箇所で落ちていたのです。
偶然とは考えにくく、更新プログラムが持ち込んだ不具合であると判断しました。
効かなかった対処 ― ここに時間を使わないでください
この問題はExcelのプログラム自体の不具合であるため、設定や環境をいくら調整しても改善しません。
弊社が実際に試して効果がなかったのは次のとおりです。
- Officeの修復(クイック修復・オンライン修復の両方)
- Officeの再インストール/別PCへの新規インストール
- 最新の更新プログラムの適用(9月版KB5002914)
- Excelのセーフモード起動
- アドインの無効化
- Excelのユーザー設定のリセット
- セキュリティソフトの一時停止
- 常駐ソフト(リモート操作ソフトなど)の終了
インターネットで検索すると上記の対処が数多く出てきますが、この症状に関してはいずれも解決しません。
時間を使う前に、まずバージョン番号をご確認ください。
解決手順:更新プログラムを2つ削除する
解決方法は、KB5002914(9月版)→ KB5002903(8月版)の順に削除することです。
順番が逆だとうまくいきませんので、必ず新しいほうから外してください。
1. Officeをすべて閉じる
Excel・Word・Outlook・PowerPointなど、Office製品をすべて終了してください。
起動したままだと削除に失敗します。
2. 削除する更新プログラムがあるか確認する
Windows 11では、画面操作(GUI)から削除することができません。
[設定]→[Windows Update]→[更新の履歴]→[更新プログラムをアンインストールする]と進んでも、そこに並ぶのはWindows本体の更新だけです。Officeの更新プログラムは、この一覧には表示されません。
従来は「コントロールパネル」→「プログラムと機能」→「インストールされた更新プログラムを表示」から削除できましたが、Windows 11ではこのリンクが[設定]アプリへ転送されてしまい、たどり着けません。
ここで「KB5002903が見つからない」「もう削除できないのでは」と諦めてしまう方が非常に多いところです。削除自体は可能です。以下のコマンドで行います。
まず、お使いのPCに対象の更新プログラムが入っているかを確認します。
スタートボタンを右クリックして「ターミナル」または「Windows PowerShell」を開き、次をそのまま貼り付けてEnterキーを押してください。
Get-ChildItem "HKLM:\SOFTWARE\Microsoft\Windows\CurrentVersion\Uninstall",
"HKLM:\SOFTWARE\WOW6432Node\Microsoft\Windows\CurrentVersion\Uninstall" |
ForEach-Object { Get-ItemProperty $_.PSPath -ErrorAction SilentlyContinue } |
Where-Object { $_.DisplayName -match 'Excel 2016.*KB' } |
Select-Object -ExpandProperty DisplayName -Unique次のように表示されれば、削除対象が入っています。
Microsoft Excel 2016 用セキュリティ更新プログラム (KB5002903) 64-Bit Edition
Microsoft Excel 2016 用セキュリティ更新プログラム (KB5002914) 64-Bit EditionKB5002914が表示されない場合は、9月の更新が未適用というだけですので、そのまま次へ進んでください。
どちらも表示されない場合は、別の原因が考えられます。
3. 更新プログラムを削除する
削除はKB5002914(9月版)→ KB5002903(8月版)の順に行う必要があります。
次のコマンドは、この順番どおりに自動で処理します。
今度は管理者権限が必要です。スタートボタンを右クリックし、「ターミナル(管理者)」を選んでから、次をそのまま貼り付けてEnterキーを押してください。
foreach ($kb in "KB5002914","KB5002903") {
for ($i = 0; $i -lt 8; $i++) {
$e = Get-ChildItem "HKLM:\SOFTWARE\Microsoft\Windows\CurrentVersion\Uninstall",
"HKLM:\SOFTWARE\WOW6432Node\Microsoft\Windows\CurrentVersion\Uninstall" |
ForEach-Object { Get-ItemProperty $_.PSPath -ErrorAction SilentlyContinue } |
Where-Object { $_.DisplayName -match "Excel 2016.*$kb" } | Select-Object -First 1
if (-not $e) { break }
if ($e.UninstallString -match '^"(.+?)"\s*(.*)$') {
Write-Host "$kb を削除しています... (試行 $($i + 1))"
Start-Process $matches[1] -ArgumentList $matches[2] -Wait
Start-Sleep -Seconds 3
} else { break }
}
Write-Host "$kb の処理が終わりました"
}同じKB番号が何度も処理されることがあります。これは異常ではありません。
Officeは製品ごとに更新プログラムの登録が作られるため、同じKB番号が複数並びます。上のコマンドは、対象が無くなるまで繰り返すようにしてあります。
処理には数分かかる場合があります。画面が止まって見えても、途中で中断しないでください。
4. 削除できたか確認する
ステップ2のコマンドをもう一度実行してください。
何も表示されなければ削除完了です。
5. Excelのバージョンを確認する
「30秒で確かめる方法」のコマンドをもう一度実行し、16.0.5565/16.0.5569以外の番号になっていれば成功です。
戻り先の番号はPCによって異なります。弊社の例では1台が16.0.5561.1001、もう1台は16.0.4266.1001まで戻りました。
これはそのPCが以前どの更新を適用していたかによる違いで、どちらでも問題なく解決します。
最後にExcelを起動し、コピー&貼り付け・Escキー・フィルコピー・xlsファイルの4点をご確認ください。
削除しただけでは、数日で元に戻ってしまいます
ここが最も重要な部分です。
更新プログラムを削除しても、そのまま使っているとWindows Updateが自動的に同じ更新を再び適用してしまい、数日で症状が再発します。
実際に弊社のPCでも、削除した後に自動で再適用された記録が残っています。
設定のトグルをオフにするだけでは止まりません
[設定]→[Windows Update]→[詳細オプション]にある「その他のMicrosoft製品の更新プログラムを受け取る」をオフにしても、Office関連の更新は降ってきます。
これは、表示上のスイッチがオフになっても、Microsoft Updateというサービス自体が配信元として登録されたまま残るためです。
見た目と実際の動作が食い違っているため、「オフにしたのに更新された」ということが起こります。
配信元の登録を解除する
確実に止めるには、サービスの登録そのものを解除します。
こちらも管理者権限のターミナルで、次を実行してください。
$sm = New-Object -ComObject Microsoft.Update.ServiceManager
$sm.RemoveService("7971f918-a847-4430-9279-4a52d1efe18d")あわせて、設定画面側の表示も実態に合わせておきます。
Set-ItemProperty -Path "HKLM:\SOFTWARE\Microsoft\WindowsUpdate\UX\Settings" `
-Name "AllowMUUpdateService" -Value 0 -Type DWordこの2つを両方行って、はじめて確実に止まります。
なお、この操作による影響は次のとおりです。
- Windows本体の更新は今までどおり継続されます(セキュリティ上の心配はありません)
- 止まるのはOfficeだけでなく、Microsoft Update経由で配信される他のMicrosoft製品の更新も対象になります
業務用サーバーソフトなどを利用されている場合は、この点をご確認のうえ実施してください。
元に戻す方法
Microsoftから修正版が公開された際は、次の操作で元に戻せます。
- [設定]→[Windows Update]→[詳細オプション]→「その他のMicrosoft製品の更新プログラムを受け取る」をオン
このスイッチをオンにするだけで配信元の登録も復活し、Officeの更新が再開されます。
実施前にご確認ください
KB5002903およびKB5002914は、Excelのリモートコード実行の脆弱性を修正するセキュリティ更新プログラムです。
これを削除するということは、修正された脆弱性を抱えたままExcelを使うことを意味します。
削除されている間は、次の点にご注意ください。
出所のわからないExcelファイルを開かないでください。(メールの添付ファイル、インターネットからダウンロードしたファイルなど)
Microsoftから修正版が公開されたら、更新を再開して適用してください。
業務が止まる影響と、脆弱性を抱えるリスクを比較したうえでご判断ください。
弊社では、業務への影響が大きいと判断したうえで、上記の注意事項をお伝えしたうえで実施しています。
xlsファイルが開けない症状も、同じ原因です
同じ時期に「xls形式のファイルを開くとExcelが落ちる」という症状も発生しています。
これも今回のKB5002903が原因で、本記事の手順で同時に解決します。実際に弊社でも、更新プログラムの削除後にxlsファイルが正常に開けることを確認しました。
この症状について、Excelを使わずにファイルを開けるようにする回避策を別記事でご紹介しています。
更新プログラムを削除できない事情がある場合(社内規定でセキュリティ更新の削除が認められていない場合など)は、そちらをご覧ください。
→ Excelでxlsファイルが開けない場合の解決、対処方法
まとめ
- Excelでコピーはできるのに貼り付けができない原因は、2026年8月の更新プログラムKB5002903の不具合
- 9月版のKB5002914を適用しても直らない
- 対象はMSI版のExcel 2016(ビルド16.0.5565.1001/16.0.5569.1003)。Microsoft 365版は影響なし
- Officeの修復・再インストール・セーフモードなどでは解決しない
- Windows 11では画面操作から削除できない。PowerShellのコマンドで削除する
- KB5002914 → KB5002903の順に削除すれば解消する(弊社3台で実証済み・再起動不要)
- 削除後は配信元の登録解除まで行わないと、数日で再発する
お困りの場合はご相談ください
「バージョン番号の確認方法がわからない」「管理者権限での操作に不安がある」「複数台のPCで同じ症状が出ている」といった場合は、弊社にご相談ください。
福岡を中心に、法人様のパソコン・ネットワークのトラブル対応を承っております。
本記事の内容は2026年9月11日時点のものです。Microsoftから修正版が公開された場合は、更新を再開して適用いただくようお願いいたします。